政府の「2020年CO2 25%削減」という中期目標のもとで、住宅やビル建築物の環境性能に対する要求や期待が高まる一方、快適性を求め、ますます増加傾向にあるエネルギー需要に比例して、増え続けるCO2排出量 ―その排出削減には建物の省エネ構造はもとより、新エネルギーの積極的な導入が不可欠であると思われます。
今回は、集合住宅で使用する給湯熱について、再生可能エネルギー(太陽熱)と高効率エネルギー機器(エコジョーズ)を組み合わせたエネルギー供給システムを構築し、CO2排出量の削減を図ったので、その概要をご紹介します。
システムは、太陽熱集熱装置(共用部の太陽熱を集熱)、ソーラー共用配管(集熱した熱を各戸に分配)、ストレージタンク(各住戸内に太陽熱を蓄熱)、バックアップ用高効率ガス給湯器(エコジョーズ)から成り立っている。 太陽熱集熱装置で集熱した熱はブライン(不凍液)にてソーラーミキシング装置、ソーラー共用配管を経由し各住戸のソーラー熱交換機に循環供給される。供給された太陽熱は一旦太陽熱ストレージタンクに貯められ設定温度に補正されたのち給湯される。太陽熱のみで設定温度にならない場合は、高効率ガス給湯器にて昇温、ストレージタンクを経由し給湯する。
太陽熱集熱装置は1基当たりの設置面積12.73m2、集熱面積11.9m2の大型タイプを採用。
表面ガラスは強化処理した白ガラスで日射透過効率を向上させている。
また、本体からの放熱防止のため表面はガラスを複層化し、裏面は35mmの高断熱フェノール系フォームが施されている。太陽熱を集熱する集熱板は選択吸収膜を電着コーティングした特殊配管形状の高効率な集熱板で冬季でも高温域の集熱を可能にしている。
太陽熱は、熱交換機を経由して一旦ストレージタンク(200リットル)に蓄熱される。
蓄熱した温水はタンクリモコンの設定温度と制御バルブにて温度補正されシャワー、カランに給湯する。蓄熱温度が設定温度より高い場合は水と混合して(B)の回路よりカランに直接給湯する。一方、低い場合は(A)の回路よりガス給湯器を経由、温度補正されてタンク回路からカランに給湯する。尚、浴槽への湯張りは常に給湯器を経由して行う。その場合タンクからの温水供給温度は、約30℃以下に温度補正される。浴室乾燥、床暖房等は高効率ガス給湯器(エコジョーズ)にて賄う。
当該マンションでは、太陽エネルギーの回収状況及びそれに関する気象状況(日射量・温湿度・降雨量・風向風速)、共用部での※電力・※水道水消費量等をモニター、共用部ロビーの大型のテレビモニターにて 「見える化」。
また各住戸内でも太陽熱の利用状況、お湯の消費状況、CO2削減量等がストレージタンクのリモコンに表示される仕組みになっており、これらを通じて入居者の更なる省エネへの啓蒙を図る。
これら収集したデーターは、今後の環境配慮型マンション設計にも生かされる。
尚、ソーラーセントラル設備機器の運転故障の情報は、インターネットを経由しリアルタイムで収集され機器のメンテナンスに活用される。
※オプション対応
一般に共同住宅における戸当たりの年間給湯負荷は4,156KWh、浴槽追い焚き負荷は620KWh、今回計画の63戸では、261.8MWh(給湯)、39MWh(追い焚き)と想定している。
本システムで、ソーラーの年間集熱量を1,683MWhと想定すると、実質給湯設備でのエネルギー消費量は2,473KWh/年で、住棟全体では155.8MWhとなり太陽熱利用での消費削減率は全給湯消費エネルギーの約35.2%になる。
CO2排出量では給湯・追い焚きでの排出量は882Kg-CO2/戸、住棟全体では約55. ton-CO2となり太陽熱利用でのCO2削減量は311Kg-CO2/戸、住棟全体で19.6ton-CO2の削減となる。
住戸の給湯設備でのガス使用量及び給湯使用量を月別に示したもので、△の折れ線グラフは従来のガス給湯設備(当社比)でのガス料金を、□の折れ線グラフは、今回採用したソーラーセントラル+エコジョーズシステムでのガス料金を示し、削減額は約 21,000円/年間となっている。
※尚、当ランニングコストは、集合住宅での平均値であり厨房でのガス使用量は含んでいない。
※またガス単価は、平成22年11月現在の東京ガス一般家庭用ガス単価とした。